新型コロナウイルスの動向予測と提言
日本の動向予測
新型コロナウイルス についての日本の動向の予測を書きます。
1.日本も中国以外の他国同様に、確診数が指数関数的に増加するおそれがあります。
2.指数関数的な増加の意味を、日本人の多くが数週間以内に知ることになります。
3.遅かれ早かれ、非常事態宣言で外出が制限されます。
対策提言
#新型コロナウイルス 対策の提言をします。
a.指数関数的な感染拡大による医療崩壊回避を第一目標とすべきです。
b.個別の事例のトレースではなく、疑似例の検査率を上げるべきです。
c.基本再生産数でなく倍加時間を評価すべきです。
d.外出制限が感染拡大抑制に効果が大きいことを広報するべきです。
真の脅威は感染拡大の速度
図を見るとわかるとおり感染症は拡散初期には指数関数的に感染が拡大しやすいです。新型コロナウイルスも、武漢封鎖前後の中国で1.4-3.0日で倍増する速度で確診数が増えています。また中国以外でも、約3日に2倍になるハイペースで確診数が増加しています。これが続くと1か月で感染が1024倍になります。
武漢と中国からわかること
現在の中国は確かに確診患者数は収束傾向です。しかし中国の厳格な封鎖政策が影響していることを知っておく必要があります。武漢では今も戒厳令なみの完全封鎖状態で、許可のある者しか外出が許可されない地区も多いです。それでも毎日3桁の新規確診が出続けています。https://ncov.dxy.cn/ncovh5/view/pneumonia
ちなみに武漢市の確診者は3/7時点で20049人です。確かに、多いです。しかし武漢市は大都市で、人口は1089万人です。人口に占める割合は、わずか0.18%に過ぎません。それでも、こういった状況になっているのです。医療が崩壊する状況になってから対策をしても、遅いのです。
https://ncov.dxy.cn/ncovh5/view/pneumonia_area?aid=420000
もし現状の武漢市で全員を解放して元通りの生活をさせたら、確診数は再び増加に転じるでしょう。3日以内に感染が倍増する状況が、再開されるためです。たとえ人口比に占める確診者の割合が少なかったとしても、その数が増えれば増えるほど、通常の生活を再開させることは困難になります。
この状態になると、武漢やイタリアのように、非常事態宣言を出して地域を完全封鎖して、地域外から物資を供給しながら延命処置をするしかなくなります。経済は停滞します。その地区のほとんどの人が、まだ感染もしていないにも関わらず、です。ある日突然、自分の街がレッドゾーンになるのです。
ここから言えることは、新型コロナウイルスについては、感染者数を指数関数的に増やさないことが、社会を維持するための必須条件となるということです。コロナは、一定時間ごとに数が2倍に増える、時限爆弾のようなものなのです。いかにその密度を少ないまま抑えられるかが致命的に大切になります。
ちなみに中国武漢のある湖北省以外の省では、他省からの移動者の2週間自室隔離を始めとする徹底した検疫と厳密な外出制限を敷いています。地区によっては1家族につき3日に1人、1時間だけ外出が許可されます。北京や上海でもバスの乗車密度管理や予約乗車、出勤率制限などさまざまな対策をしています。
中国以外の他国との比較
一方で中国以外の確診数上位の国の推移を見ると、ほぼいずれも指数関数的な増加になっていることがわかります。2枚目は縦軸を対数軸にしたものです。2枚目のグラフでは指数関数的な増加が直線に近似できます。9か国中6か国が指数関数的に増加中で、しかもその傾きが1.0-2.4日で2倍という急ペースです。
他国と異なる傾向の国のデータは、慎重に見る必要があります。
シンガポールはほぼ水平となっており、わずかな増加にとどまりますが、検疫はもちろん、監視カメラや警察を使った徹底的な接触者の補足と隔離を実施しています。確診が100人少々なのに、2593人を隔離しています。 https://jp.reuters.com/article/china-health-singapore-idJPKBN20F11C
他にはアメリカも水平部分が多く階段状に推移していますが、CDCの検査拒否や検査キットの不備が大きな問題となりました。アメリカのように、検査体制の問題で検査数が増えない国も、他国と異なる傾向で、確診数が不当に低く推移する場合があると考えられます。
日本の動向
日本も、低い増加傾向が続いています。欧州の先進諸国でも、軒並み急激な確診数の増加が見られる中で、ほぼ通常運行であった日本だけは感染拡大を抑えられていると信じるためには、検査結果だけではなく強力な効果のある対策を実施していることを示す状況証拠も必要であると考えます。
しかし日本は、中国レベルの外出制限や、シンガポール並みの検疫や監視をしていません。確かに日本人は綺麗好きかもしれません。しかし3日以内に2倍の確診者を生むコロナを抑えるほどの効果を期待するのは合理的とは言えず、積極的な証拠がないならば、他国同様の増加をしていることを想定すべきです。
具体的には、中国で最も倍加時間の長かった3.0日や、確診数上位9国で最も長い2.4日を考慮すると、日本でも倍加時間は3.0日程度の短さであることは想定するべきと考えます。日本で確診者の出た1/16から、3/7で51日となります。51/3.0=17なので、217=131,072人の確診者がいてもおかしくないと考えます。
現在の日本の人口1億2600万を考慮すると、0.1%は確診者相当の人がいるレベルであると想定しなければなりません。ちなみに封鎖された武漢市では、人口の0.18%が確診者でした。もはや、一刻の猶予もないと考えるべきです。対応が後手になってからでは、遅いのです。
検査をしない国、日本
日本でも人手不足などの問題のため、医師から保健所に検査依頼しても断られるケースがあり、検査数不足が懸念されます。また日本はなだらかに漸増し、他国と異なり指数的ではなく直線的に増加しています。この場合に疑われるのは、すでに検査可能数が飽和している可能性です。
保健所は予算も削減され、人員も設備も限られた状況で、おそらく現場では検査可能な限界まで頑張っている方々が多数いらっしゃることと思います。本当にありがたいことです。しかし、指数関数的な増加をするものの前では、どのようなリソースも枯渇します。リソースは指数関数的には増えないためです。
現在の都道府県ごとの直近の検査ペースは、1日にわずか数件から数十件となっています。確診者レベルの人が13万人程度まで増えている可能性があることを考慮すると、すでに飽和している可能性があると思われます。
https://twitter.com/kenmo_economics/status/1236064012598538240
本来は指数関数的に増加することが想定される、累積の陽性者数の推移がほぼ直線的となっています。傾きが変わった点を見ると、2/16頃から飽和していたのではないかと思われます。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
濃厚接触者への積極的疫学調査の難しさ
検査数を見ると、3/4以降の検査数が激増していますが、これは濃厚接触者に対する検査数も含む値です。しかし陽性数がほぼ増えていないことから、濃厚接触者に対する検査の陰性率が高いことが示唆されます。つまり濃厚接触者を追跡しても陽性者が見つかる確率は低いと言えます。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
また、市中感染が多発している状況や、軽症や無症状の人からの大量感染の可能性が否定できなくなった時点で、濃厚接触者の全追跡は短期のうちに非常に困難になることが予想されます。もちろんこの知見が得られたのはクラスター対策班の緻密な追跡調査のおかげですが、方針転換が必要な時期と考えます。
したがって濃厚接触者に対する検査数枠や人手は、可能であれば都道府県単位の保健所の検査数を補助するために、振り分けるべきです。陽性率が高い可能性のある検査に絞らなければ、確診者の見逃しにつながり、さらにはコロナ対策の方針決定にも重大な影響を及ぼします。
既に出始めた医療への影響
コロナはすでに日本の医療を圧迫し始めています。
累積患者数は増加の一途で、退院数は小さいです。退院する人より患者になる人の増え方の方が多いのです。しかも、これは疑似例を含みません。したがって、似たような症状を持つ患者さんはその何倍も増えている懸念があります。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
新型コロナウイルスでは、感染から確診まで、およそ2週間のタイムラグがあります。したがって、今すぐに対策をしても、その効果が表れてくるまでには2週間かかります。その間に、倍加時間を3日とすると確診数は16倍以上に増加します。このため、迅速な対策が急務です。
一旦まとめ
以上より、
1.日本も中国以外の他国同様に、確診数が指数関数的に増加するおそれがあります。
2.指数関数的な増加の意味を、日本人の多くが数週間以内に知ることになります。
3.遅かれ早かれ、非常事態宣言で外出が制限されます。
また、
a.指数関数的な感染拡大による医療崩壊回避を第一目標とすべきです。
b.個別の事例のトレースではなく、疑似例の検査率を上げるべきです。
軽症・無症状の多さから見た抑制方針
新型コロナウイルスには、更に大きな問題があります。
それは、症状のない感染や軽症の感染の多さです。
無症状や軽症者を考慮に入れた基本再生産数は、はるかに大きい可能性があります。つまり確診数の何倍もの無症状者や軽症者がいる可能性です。そして、無症状や軽症者も、クラスター感染を起こすと考えなければ説明がつかない調査結果が出ています。無視できない現象なのです。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html
当然、無症状や軽症者によるクラスター感染の可能性を考慮に入れたら倍加時間も短縮します。しかし、前に述べたように濃厚接触者の追跡調査は陽性率が低いと考えられるため、調査の効果が出づらいです。したがって、指標としては、観測可能な確診数の倍加時間を注視するのが確実だと考えます。
以上より、新型コロナウイルスでは軽症や無症状者によるクラスターも含めた、実質的な基本再生産数の算出が困難である可能性が高いため、
c.基本再生産数でなく確診数の倍加時間を評価すべきです。
本当にインフル程度の強さだったのか?
一方で、感染を避ける観点では、無症状や軽症者によるクラスター感染も含めると、新型コロナウイルスの拡散力はインフルエンザよりかなり強い可能性があるとも言えます。他国では確診数ですら3日で倍になるハイペースなのです。普通に生活を続けていては、感染を避けることが困難であるとも言えます。
拡散力の例としては、韓国の例の教会で、1,160人との接触があった事例もあります。また、スポーツクラブやライブ等で多数との接触がある場合もあります。普通に生活している限り、どこかでスーパースプレッダーと接触し、感染してしまう可能性があると言えます。
https://graphics.reuters.com/CHINA-HEALTH-SOUTHKOREA-CLUSTERS/0100B5G33SB/index.html
クラスターを生まない社会へ
クラスターを個別に対策することは必要ですが、そもそも人間は風を避けて屋内に集まって生きるものなので、全てのクラスターをなくすことは困難です。人が集まる限り、大量感染の可能性は避けられず、それがクラスターになるのです。また、誰もが気付かずに大量感染の原因となる可能性もあります。
こういった大量感染のクラスターが、感染拡大に大きな影響を及ぼすことがわかってきています。この発生をいかに抑えながら生活していくか、また発生させずに社会生活をどのように維持する仕組みを作るかが、これからの社会で重要となります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html
効果的な対策は外出抑制
この感染力の高い新型コロナウイルスを避けるために効果的な方法は、まずは外出を控えることです。仮に、皆が外出を半分にしたとしましょう。例の教会や、ジムや、ライブに行った人が半分になったとします。その場で1人に感染する確率が同じだとしても、感染者の増加は半分になります。
他にも遠距離移動して人に会ったり、ふだん会わない人と会ったり、ふだん交流しない集団に混じったり、普段行かない場所に行ったりすると、感染拡大の可能性が高くなるため、避けることが効果的です。不特定多数の集団のイベントに参加することは非常に危険だとも言えます。
問題は、どの程度まで抑制することが必要かということです。直近では、患者数の増加を、退院数の増加と同レベルまで下げられるだけの抑制が必要となってくるように思われます。数分の1には抑えた方が良いというのが私の大まかな予想となりますが、専門家による推定を待ちたいと考えます。
まとめ
以上より、
d.外出制限が感染拡大抑制に効果が大きいことを広報するべきです。