共同幻想とVRの未来

VRは、HMDやディスプレイに映る幻のお遊びに過ぎないと言われることもあるだろう。知らない者には理解も想像もしづらいために、使う人が不当な批判に曝される場合もあるかもしれない。しかし何も怯むことはない。 2018/7/18 4:12

考えてみると、私たちが生を享けてから今に至るまで、脳が現実の何かを直接認識したことはない。現実に思えるものはすべて、感覚器官という生体センサから伝わる電気信号を元に脳内に再構成された幻想だ。 2018/7/18 4:14

人はみな、髄液に満たされた水槽の脳に浮かぶ小さな幻影の世界に生きている。現実に見えるものは全て幻だし、現実に思える幻は脳内では現実と等価だ。極論をいえば、部屋に引きこもっていても世界中を旅していても、せいぜい1.5L程の孤独な蛋白質の塊に入出力される情報が多少変わるだけにすぎない。 2018/7/18 4:17

それでも人は、同じ夢を見ることを求める。そのために人類は高度な言語や文化を生み出し、言葉や平面情報を使って共同幻想の構築に努めてきた。しかし夢や想像と、現実の体験の解像度には大きなギャップがあり、夢想が現実を代替できることは殆ど無かった。これまで、夢が現実になることは稀だった。 2018/7/18 4:20

しかし私たちは、情報処理の高速化と並列化の果てに、現実と同等かそれ以上になり得る魔法が、史上初めて一般に普及し始めた時代に生きている。画面の向こうに見えた別世界に数分で降り立ち、実際に友人と会って話して共同作業をすることは既にVRCでは日常的な光景だ。 2018/7/18 4:24

この意味で、いまVRCに面白さを感じて日々インしている人たちは、間違いなく時代の先端を生きている。別に気負う必要はないけれど、VRCで日々友人と会って遊んだり話したりワールドを自在に飛んだりする経験は、VR時代ならではのものだし、今VRCにいる人たちの日常が、未来の生き方になっていく。 2018/7/18 4:28

今は確かにVRの中だけで生きていくのは難しく、どこかで非VR界との調整が必要になるだろう。それでも、VRは希望であり得ると思うしそうであってほしいと思う。仮想世界もまた、誰かの脳内の小さな夢幻の一つであるのと同時に、幾多の人々の壮大な現実の一部を構成していて、すべては既に繋がっている。 2018/7/18 4:33

そしてVRC民は、いくつものかわいいアバターを着替えた後に、幾多のワールドをジャンプした先に、変わらない魂があることを知っている。それが想像や夢に過ぎないものではなく、目の前やミラーの中に確かにあることを知っている。夢も現実も実際に手が届く場所に同時にあることを誰より知っている。 2018/7/18 4:37

だから、信じたい現実を信じよう。ディスプレイやHMD越しの魂を感じよう。ゴーストの囁きに身を任せ、魂が震える瞬間を探し、遊び、作り、交歓しよう。VRの世界に不可能はない。想像力の続く限り、魂の姿や世界さえ自在に変えられる場所に、私たちは居る。それはいずれ現実と繋がり、次の現実になる。 2018/7/18 4:43